Victorian Wrap

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Victorian Wrap(ヴィクトリアン ラップ)
1880年オランダ 身体を優しく包み込む、約150年前の装飾品です





ヴィクトリア朝の女性たちは、さまざまな装飾品を身に纏い自身を着飾りました
この「ヴィクトリアン ラップ」もそのひとつです

ストールとケープを足して2で割ったような、曖昧で不思議なデザインが魅力です




ラップ(包む)の名の通り、身体を包み込むことだけを目的としたシンプルな構造になっています

肩にしっかりと布が乗るので「ケープ同等の安定感」があり、前面はストールのように布が垂れさがって「縦長のライン」を描きます




ベルトなどでウエストにポイントをつくれば、引き締まった印象に早変わり

ヴィクトリア時代の一風変わった装飾品を身に纏い、現代のコーディネートにアクセントを付けてみてはいかがでしょうか?



半・分解展の会場でも多くの方がヴィクトリアン ラップの魅力に引き込まれていました



















#半分解展をつくろう 】第4弾目となる今回は「ヴィクトリアン ラップ」です


#半分解展をつくろう では「アレンジ と チャレンジ」をコンセプトに
初心者の方でも挑戦しやすい、シンプルな構造の旧き型紙を紹介しています


ヴィクトリア時代のお洒落をあなたらしく、現代に蘇らせてくさだい



それでは上記、当時の実物をもとに、私が製作したヴィクトリアン ラップを紹介します

【 1880年 オランダ モデル 】







もちっとした感触のメルトンウール素材のうえに、同素材のフリンジとロープで装飾を施しました




1880年オランダモデル の特徴は、サーキュラー状に広がるバックスタイルです
美しいドレープが可愛らしくも気品のある表情をつくります




ヴィクトリアン ラップが1枚あると、コーディネートに悩む季節の変わり目に重宝します

秋口にはワンピースのうえに、冬の訪れにはざっくりとしたニットのうえに羽織ってみてはいかがでしょうか



いつものワンピースが全く違う印象に



ネック部分にはアイキャッチとなるロープ刺繍、腕まわりには温かみを感じるフリンジを


垂れ下がる裾部分には、ヴィクトリア時代によく見られる「オーストリアン ノット」の模様を一筆書きで



背面は、存在感のある大きなドレープに合わせて、特大のオーストリアン ノットを施しました





そして今回は、当時の実物だけではなく「当時の製図書」からもヴィクトリアン ラップを製作してみました


1881年アメリカ 「ドレスとマントの裁断士」より参照

シンプルな構造にもかかわらず、ちゃんと身頃から製図を展開している点が興味深いです
フリーハンドでも描けそうなパターンなのに理論的に説明されています


この製図書をもとに製作したヴィクトリアン ラップが下記になります



【 1881年 アメリカ モデル 】







こちらはダークカラーのメルトンウール素材でシックに仕立てました
端に付けたウールのタッセルがポイントです










シックな印象に仕立てたアメリカモデルですが、実は型紙の構造にオランダモデルとは決定的に違う点があるのです


それは「肩甲骨ダーツ」です



旧い型紙によく見られる「後ろに下がった肩線」
その構造線がダーツとして、アメリカモデルには残されていました(矢印の場所)

肩甲骨に近い位置にダーツがあるおかげで肩に立体感が生まれ布がストンと落ちていきます
背面のドレープも少ないために、全体的に落ち着いた印象を受けます




オランダモデルと比べてみると、その違いが良くわかります
波打つドレープの分量がまったく違いますよね

オランダモデルは可愛らしく、アメリカモデルは凛とした表情です




その型紙の特徴を生かして、装飾は極力省きシンプルなデザインにしました



オランダモデルに使用したフリンジを丸めて「タッセル」にし、茶蝶貝の釦で留めています




肩の丸みが際立つ上品な印象のバックルタイル
わずかにセーラーカラーを彷彿とさせるスクエア気味のカットもポイントです

アメリカモデルは、大人っぽく着こなせるヴィクトリアンラップではないでしょうか
 





2種類のヴィクトリアンラップはオンラインストアよりご購入いただけます


型紙は「PDFデータ」となります
実寸大の型紙が、A4サイズに小分けになっています

データに同封される説明書に沿って、印刷したA4用紙を貼り合わせるだけで「実寸大の型紙が完成」します




※印刷の関係上、用紙と用紙のあいだに5mmほどの隙間ができる場合がございます
隙間は気にしないで大丈夫です
製作するにあたり問題はありません


また、裁断済みの型紙を郵送でお届けすることも可能です



説明動画もあります
つくられる方は参考にしてください




ここからはヴィクトリアン ラップに挑戦する方に向けて、製作の参考になるポイントを書いていきます





ヴィクトリアン ラップを広げてみました
ご覧の通り、非常にシンプルな構造です
洋裁初心者でも問題なく挑戦できるアイテムだと思います




背中の中心で折り畳むと、このようにピッタリと重なります
つまり、型紙は「1枚だけ」です
簡単そうじゃありませんか?




ヴィクトリアン ラップをデザインするうえで重要になるのは「装飾」です
シンプルな構造ゆえに、どのような装飾を施すかがカギになります




ヴィクトリア時代の装飾はレースやチャームが贅沢につかわれています

装飾で困っている方は「トリムコ」さんを利用してみてはいかがでしょうか?
私のおすすめショップです

定番のレースから、ひとクセあるアイテムまで幅広く揃っています
オンラインショップも良いですが、お近くの方は台東区蔵前にある実店舗に足を運ぶことを強くオススメします
宝探し感覚で面白いアイテムが見つかるはずですよ

私がオランダモデルとアメリカモデルに使用したウールのフリンジはこちらです
ウールのロープは残念ながら廃盤となってしまいました(復活を願います)




前に垂れさがる布部分のウラに内ポケットを忍ばせてみました
文庫やスマホが入るサイズにしています

ヴィクトリアン ラップはジャケット的な感覚もあるので、内ポケットが付いていても違和感がありません
なかなか便利ですので、皆さんも製作する際はお好きな個所にポケットを付けてみてはいかがでしょうか




1860年ドイツのファッションイラストには、フード付きのヴィクトリアン ラップが紹介されています

ヴィクトリアン ラップは主に防寒具の役割として紹介されることが多いようです
内側はキルティング生地を使用して保温性を高めているものもありました




また、ヴィクトリアン ラップをニットで編むと「SONTAG」という装飾品になります

ソンタグも19世紀に非常によくみられたアイテムです
垂れさがった前布を身体に巻き付け、背面で固定し着用します
しっかりと身体に密着させるのでヴィクトリア時代の薄着の女性たちは重宝したでしょう





1862年フランスのファッションイラストのなかに、フリルの付いたヴィクトリアン ラップをソンタグのように背面で留めているイラストも発見しました
このような着こなし方もなかなか可愛いです


早速、真似してみました
交差させるには前布の長さが足りなかったので、脇の下から通して背面に持っていきます



そして、腰付近で留めてみました




釦などを設けて背面で留められるようにすれば充分に着用可能です
思いのほか身体にピッタリと固定されるので、ちょっとした上着を着ているかのような感覚になりました

さまざまな着こなしアレンジができるのもヴィクトリアン ラップの魅力です












ぜひ、皆さんも【ヴィクトリアン ラップ】をかたちにしてみてください

その「チャレンジ」を応援します
そして、好きなように、自由に、「アレンジ」を愉しんでください


【 自分の服を自分でつくる 】
心が満たされる贅沢な時間をヴィクトリアン ラップと共に




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素敵な作品をお待ちしております

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