M - notch

| |



M - notch (エムノッチ)
1809年フィラデルフィア
フランス革命後の紳士たちが着た「造形美のコート」です



The taylors' instructor より製作






今回紹介するMノッチは、1809年にフィラデルフィアで出版された「The taylors' instructor」を基に製作しました。

フィラデルフィアは1776年に「アメリカ独立宣言」が行われた地です

始めのページには「アメリカ合衆国の独立34年目の9月20日西暦1809年 ジェームス・クイーンとウィリアム・ラップスリーは、本の題名を当事務所に寄託した」と記されています。
現在イメージする大国アメリカとは違う、黎明期アメリカの貴重な型紙です。


この本は1796年にロンドンで出版されたものに改良を加え、アメリカで再出版されたと書かれています。
「マスターテイラーから見習いまで、幅広く役立つ一冊だ」と自信に満ち溢れた一文が添えられます。





私が製作した「Mノッチ」です。
お届けする型紙は、この画像のものになります。



「Mノッチ」は俗称です。
このようなコートの総称はRegency tailcoat(リージェンシーテイルコート)と呼びます。
その中でも、衿のカットが「M字」に切られたものだけがMノッチと呼ばれます。


フランス革命後にイギリスで生まれたMノッチは、アングロマニアたちの目に留まり、瞬く間にフランスやアメリカにも広がっていきます。
「M字」に切られた刻み


例えば、上記2枚の肖像画は新古典主義を代表する画家「ジャック=ルイ・ダヴィット」です。

「ナポレオン」と聴いて、白馬に跨り高らかに右手を上げている姿をイメージしませんか?
まさに、あの肖像画を描いたのが
ジャック=ルイ・ダヴィットです。

彼の着るコートの衿元に注目してください。


このようにMノッチを着た肖像画は数多く残っています。




最も有名な作曲家「ベートーヴェン」の肖像画にもMノッチは確認できます。
その他、フンメルやジョン・フィールドなどの音楽家たちの衿元にもM字の切込みが力強く描かれます。

時代的に「モーツァルト」や「バッハ」は、革命前に亡くなっているので、肖像画で確認できる上着はMノッチではなくアビ・ア・ラ・フランセーズなのですね。

Mノッチは、正に革命後の紳士像を象徴する1着だったのです。

サイズ表の寸法だけをみると、肩幅の小ささに驚かれるかもしれません
19世紀の衣服は、現代に比べ肩幅が小さく設計されています
しかし、ちゃんと着用できる設計になっているのでご安心ください

肩幅よりも「胸囲」を基準にして、サイズを選ばれることをお勧めします

まずは、ご自身の胸囲にメジャーを当てて、ヌード寸法を出してみてください
胸囲のヌード寸法から「+12~14cm」前後のサイズを選ぶのがオススメです

例えば、ヌードサイズが83cmの場合は、サイズ1または2
92cmの場合は、サイズ3または4
100cmの場合は、サイズ5または6がピッタリになります

サイズ選びで迷った時は、問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください

全体的に細身の設計ですので、迷った場合は大きい方のサイズを選ばれると良いでしょう






フランス革命後の衣服に見られる「過剰造形」を体現した形といえます。
「突き出た胸」「突起した袖山」「誇張されたなで肩」「そびえ立つ衿腰」など、全てが造形美の表現に帰結します。

ダンディズムの代名詞 ボー・ブランメルが着用していたコートがMノッチです。
フランス革命後の紳士服を愛するあなたに、この造形美を送ります





172cm 62kg サイズ3を着用













166cmの女性
サイズ0を着用






160cmの女性
サイズ0着用







165cmの女性
サイズ0着用












上記、女性の方々は皆さん「サイズ0」を着用しています
フィット感はジャストサイズです
ゆとりを持って着用したい場合は「サイズ1」が良いでしょう



【 リネン生地で製作したMノッチ 】




カジュアルに仕立てると、また印象が大きく変わります








洗いざらしでリネンの生地感を引き立たせています





当時のイラストを見れば、Mノッチの過剰造形がよく分かります。











これでもか!という程に、胸を肥大化させています。




 真横から確認できる、突き出た胸の造形



釦の開け閉めでシルエットが変化する
まさに「傾いた服」の特徴
釦を留めると胸が大きく膨らみます。



背中は極端に狭く、肩周りもコンパクト



高い衿腰は、わざと少し見える設計になっています。







上2つは、海外の美術館が所有するMノッチ







Mノッチではありませんが、長谷川が所有する1800年初頭フランスのリージェンシーテイルコートです。
赤い方はウール素材、緑の方はシルク素材



今回のMノッチは「The taylors' instructor」に記載された2つの型紙を参考にし、何度も仮縫いを重ね、ようやく完成しました。

左が「single breasted Coat」 右が「Straight Frock Coat」

どちらの衿型もM字が確認できます。

両者共に、このまま製図しても絶対に着られる服にはなりません。
特に背中のフィットが最難関です。
何度も仮縫いを行い、Mノッチを完成させました。

Straight Frock Coatの袖は、変形一枚袖になっています。
こちらは組んでみたところ、全く格好良くなかったのでお蔵入りとしました・・・



読み進めると「脇の縫い目がないコート」という変わり種も紹介されていました。
なんでもフランスで開発された裁断方法で、この設計には細心の注意が要すると書いてあります。

見るからに補正が難しそうな型紙です。
このようなパターンの古着は幾つか見たことがあるので、実際に使われていたのでしょう。


人気の型紙