French Fireman

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French Fireman(フレンチファイヤーマン)
可愛らしいシルエットが目を惹く
1900年初頭 フランスの消防服です


【衣服標本】



【実物半身】

肉厚なメルトンウール素材でつくられています
ファイヤーマンのジャケットはリネン素材のものが多く、ウール素材は比較的めずらしい個体となります



衿先の刺繍はファイヤーマンを象徴する「炎」がデザインされています



【試着サンプル】




サイズ表の寸法だけをみると、肩幅の小ささに驚かれるかもしれません
20世紀初頭の衣服は、現代に比べ肩幅が小さく設計されています
しかし、ちゃんと着用できる設計になっているのでご安心ください

肩幅よりも「胸囲」を基準にして、サイズを選ばれることをお勧めします

まずは、ご自身の胸囲にメジャーを当てて、ヌード寸法を出してみてください
胸囲のヌード寸法から「+12~14cm」前後のサイズを選ぶのがオススメです

例えば、ヌードサイズが83cmの場合は、サイズ1または2
92cmの場合は、サイズ3または4
100cmの場合は、サイズ5または6がピッタリになります

サイズ選びで迷った時は、問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください




私は172cm62kgですが、サイズ3がジャストフィットです
中に薄いカーディガンやシャツを着る余裕があります
もし、厚手のニットなどを合わせる場合は、サイズ4の方が良さそうです




この独特な「Aライン」が最大の特徴です
フロントが「ハの字」に大きく開きながらAラインをつくります



前方にしっかりと振れた袖も、ヴィンテージらしいつくりです
消防士が着るユニフォームなので、腕を動かしやすいように設計されているのですね



バックスタイルは、Aラインのフロントとは印象が異なります
グッと絞ったウエストが、シルエットにメリハリをつけています



こんなに強く絞れているのに型紙のウエストはほとんど削っていません
この造形美は「傾きの構造」という旧い型にみられる特殊な設計が生み出しているのです




「正面から見るとAライン」「後から見ると絞ったウエスト」
この相反する造形を、ダーツを用いずに前後2枚の型紙のみで構築している点が美しいと感じます
現代の設計方法では、まず表現できない造形美です

無駄な線がない、完成された美しさです
フレンチファイヤーマンの型紙は「旧い型紙の入門編」として最適ではないでしょうか

デザイン自体がシンプルなので、アレンジも楽しめる型紙になっています
お好みのポケットを付けたり、衿を付けたりしてみてくださいね





172cm62kg 「サイズ3」を着用
ちょうど良いです



作例紹介:ウールメルトン素材

私が試着動画で着ているものです

平置きにしてみると、フレンチファイヤーマンの丸っこいシルエットがより際立ちますね
肩の柔らかな丸みが好きです



右側に小さな「コインポケット」を付けてみました

元々の実物にはポケットありません
ポケットのデザイン次第で印象が大きく変わるのでアレンジが愉しいです



裏側は「大見返し」にしています

左側にのみ大きな「内ポケット」を設けました
ヴィンテージテープで縁取りしています



裏地はつけていませんが「袖裏」は付けています
袖裏があるだけで、腕の滑りが良くなり着心地が良くなります

見返しにツギハギがある理由は、ダーツ操作などではなく生地が足りず文字通りツギハギにしたためです(ヴィンテージっぽくて良いかと)



フレンチファイヤーマンを分解したのは20歳のときです
あまりの衝撃に、この1着が私の人生を変えてしまいました

【分解してみえたもの】

ファイヤーマンジャケットは、消防士が作業するための服です
にもかかわらず、分解してみると表地にも裏地にもしっかりと「縫い込み」がついていました

縫い込みとは「裏側に隠される余分な布」です
この布があるとサイズ調整が可能になり長く着ることができます

現代では、縫い込みが付いている服はまずありません
余分な布がつくと縫製が難しく、シルエットが綺麗に出せないからです
縫い込みをつけつつ美しく仕立てるには、手間をかけたテーラーメイドの技術が必要なのです

「一張羅ではなく作業服なのに、こんなにも丁寧に仕立てられた服があるのか!」
と感動し、涙を流しました



衿裏に粗く織られた麻芯が使われています
このような麻芯は1800年ごろから1930年ごろまで使用されました
ワークウェアからスーツまで、幅広く用いられた資材です



分解すると「23」という数字が確認できました
きっと芯の品番でしょうか



衿の内部に隠されたカギホックです
麻糸で頑丈に縫い付けられています



裏地側のアームホールをみると、およそ肩甲骨くらいの高さの位置に「ループ」が取り付けられます

この手のループは、ワークウェアやミリタリーウェアに見られます
服を干すときに使う「ドライループ」です

両端のループに棒を通すと、良い塩梅に袖が左右に広がり効率よく乾かすことができます
また、肩の頂点ではなく肩甲骨付近にループがある理由は着心地を良くするためです
頂点に縫い付けてしまうと、着用時にループが肩先に当たり違和感を感じてしまいます


【実物】


【消防士の集合写真】







フレンチファイヤーマンの型紙で、現代にはみられない造形美をお愉しみください
自信を持っておすすめする1型です

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