Preparedness Coat（プリペアドゥニス コート）
1917年アメリカ ひとりのテーラーが残し伝えた造形美
1917年4月6日
アメリカはドイツに宣戦布告し、第一次世界大戦への参戦を表明しました
その翌年、4年にわたる人類初の世界大戦は幕を下ろします
アメリカはドイツに宣戦布告し、第一次世界大戦への参戦を表明しました
その翌年、4年にわたる人類初の世界大戦は幕を下ろします
時を同じく1917年アメリカ ニューヨークの地で、ひとりのテーラーが長きにわたり後世に受け継がれることになった１冊の裁断書を発表します
For art is skill in expression.
【 芸術とは、表現の技術である 】
「Red Book」の著者であるフレデリック・T・クルーンボルグ氏の言葉です
氏は著書のなかで「テーラーリングは芸術である」と繰り返し主張しています
氏は著書のなかで「テーラーリングは芸術である」と繰り返し主張しています
芸術の域に達したテーラーリングを
アメリカ黄金期の礎となった造形を
半・分解展が伝えます
今回製作した型紙は、Red Bookの「将校のユニフォームに関する政府規則の抜粋」において１番初めに紹介されるPreparedness coat（プリペアデゥニス コート）です
直訳すると「覚悟のコート」
「傾きの構造」でつくられるAラインと胸の造形美
そして、たっぷりと取られたフレアー分量が軍服ながらも上品な印象を与えます
そして、たっぷりと取られたフレアー分量が軍服ながらも上品な印象を与えます
技術者として私がプリペアデゥニスコートに惹かれた最大の理由は、ウエストの「マニプレーションダーツ」です
これはアイロン操作なしではつくれない複雑なダーツ処理法です
私は旧い型紙をいくつも見てきましたが、1917年時点でマニプレーションを用いた製図はRed Book以外に見たことがありません
20世紀の初頭において、非常に先進的なスタイルです
サイズ表の寸法だけをみると、肩幅の小ささに驚かれるかもしれません
20世紀初頭の衣服は、現代に比べ肩幅が小さく設計されています
しかし、ちゃんと着用できる設計になっているのでご安心ください
肩幅よりも「胸囲」を基準にして、サイズを選ばれることをお勧めします
まずは、ご自身の胸囲にメジャーを当てて、ヌード寸法を出してみてください
胸囲のヌード寸法から「＋12～14cm」前後のサイズを選ぶのがオススメです
例えば、ヌードサイズが83cmの場合は、サイズ1または2
92cmの場合は、サイズ3または4
100cmの場合は、サイズ5または6がピッタリになります
サイズ選びで迷った時は、問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください
私は172cm62kgですが、サイズ３がジャストです
中にカーディガンやシャツを着る余裕があります
中にカーディガンやシャツを着る余裕があります
もし、厚手のニットなどを合わせる場合は、サイズ４の方が良さそうです
この美しいフレアは軍服特有のシルエットです
迅速に動いたり、装備品を装着するために、軍服の腰まわりには通常のジャケットよりも大きな余裕が必要です
これを「蹴まわし分量」といいます
フレアがたっぷりとあるからこそ、自由に動くことができるのです
このフレアは、現代の感覚でみると上品かつ優雅に映ります
そして「抑揚美」にも注目してください
上記２枚の画像は動きます
上記２枚の画像は動きます
フロント釦の開け閉めによるシルエットの変化を表しています
「傾きの構造」でつくられた服は、釦の開け閉めで造形が移動するのです
つまり「抑揚」があるのです
つまり「抑揚」があるのです
この造形美は、1920～30年ごろには失われてしまいました
イギリスが発明した「ドレープカット」や「イングリッシュドレープ」と呼ばれる裁断方法が、世界を席巻したからです
日本語の「背広」の由来は、このドレープカットからきています
日本語の「背広」の由来は、このドレープカットからきています
【ドレープカットの典型的なスタイル】
胸や背中、肩が広い
地面に垂直に落ちる前身頃
砂時計のようにウエストを絞ったシルエット
地面に垂直に落ちる前身頃
砂時計のようにウエストを絞ったシルエット
プリペアデゥニスコートしかりドレープカット以前のジャケットは「背が狭い」の特徴であり、それに対抗した「背が広い」設計がドレープカットだったのです
しかし、Red Bookの魂は現在もなお受け継がれています
21世紀現在もフレデリック・T・クルーンボルグ氏の書籍は刷新され販売され続けているのです
「FREDERICK T. CROONBORG. Blue BooK」と検索すれば現行品がAmazonで購入することができます（現行品と今回紹介しているオリジナルでは内容が異なるのでご注意ください）
そして、RedBookの１０年前となる１９０７年に出版された処女作の裁断書が「Blue Book」です
私は、Blue BookとRed Bookの両方を研究しました
スタンダードモデルとして紹介されていた両著のサックコートをつくり比べています
肩傾斜や、上昇傾向にある全体のバランス感など、興味深い発見が数多くありました
第一次世界大戦を契機に変化する「美の定義」が伝わってきます
そのときに得た知見をもとに製作したのが、この「プリペアデゥニスコート」です
ジャケットが好き、スーツが好き、テーラードに興味がある
そんな方にぜひ味わってほしい１型です
型紙を購入された方の作品
