Reticule

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Reticule(レティキュール)

19世紀初頭に誕生した小さなバックです

型紙はオンラインストアにて販売しております



毎回ご好評いただいている【 #半分解展をつくろう 】の企画

今回は1790~1820年ごろ、新古典主義の時代を生きる女性たちのファッションアイテムとして生まれた「レティキュール」を紹介します

#半分解展をつくろう では「アレンジ と チャレンジ」をコンセプトに
初心者の方でも挑戦しやすい、シンプルな旧き型紙を紹介しています


【1910年ごろのレティキュール】

私が所有するレティキュールは、エドワーディアン朝につくられたものです
およそ1790年~1910年までがレティキュールの流行した時代になります

1920年ごろからは、簡易的な構造のレティキュールではなく、耐久性に富んだ「ハンドバック」が主流になっていきました



私が所有するレティキュールは、漆黒のベルベットシルク生地に無数のガラスビーズが縫い付けられた贅沢なつくりです


紐の端に付いた「タッセル」や、底面に付くビーズの「フリンジ」などは、当時レティキュールに多く取り入れられたデザインでした

【半・分解展のレティキュール】

当時の実物をもとにレティキュールを製作しました
忠実に再現をした「レギュラー」と、私がアレンジを加えた「アコーディオン」の2タイプを用意しています

【販売する型紙の説明】

販売するレティキュールの型紙のなかには、4つのアイテムが入ります

1:レギュラーの型紙
2:レギュラー ラージサイズの型紙
3:アコーディオンの型紙
4:アコーディオン ラージサイズの型紙

以上の4つです
点線部分でカットすると、ちょうど1cmの縫い代が付きます



詳細は、動画で紹介していますので、ぜひご視聴ください
レティキュールの魅力がより深く理解できるでしょう






それでは、レギュラータイプのレティキュールを紹介します

【レギュラー ラージサイズのレティキュール】

実物よりも一回り大きい「ラージサイズ」で製作しました

ウール素材の温かみのある生地でつくっています
そしてボディには、オリジナルの刺繍をほどこしました


刺繍のデザインは、19世紀末ヴィクトリア朝に流行した直物モチーフをアレンジしてつくりました

図案の製作と、レティキュールへの刺繍は、seikoさん(@_sei_ko_y)にお願いしています



ラージサイズは、スマホがぴったり入るサイズ感にしています
お出掛けに必要最低限なものがちょうど良く収まります

【取り外し可能な持ち手】

持ち手にはリボンを選びましたが、お好みで付け替えができる構造にしました


持ち手を直接本体に縫い付けるのではなく、口の部分に設けたループに、結び付ける設計にしています

なので、持ち手をお気に入りのスカーフや、チェーンに変えることができます
その日の気分に合わせてアレンジをお楽しみください

または持ち手を取ってしまい、ポーチとして鞄に忍ばせても良いでしょう



続いては、半・分解展オリジナルのアコーディオンタイプを紹介します

【アコーディオンタイプのレティキュール】

アコーディオンタイプの特徴は、ぱたぱたぱたと折り畳まれるアコーディオン状のプリーツです
日本では「蛇腹」と呼ばれる構造になっています


横から見ると、折り畳まれたプリーツが見えてきます

アコーディオンプリーツを採用したことで、レティキュールの特徴的な輪郭を崩さずに、容量アップをすることができました



きゅっと口を閉めると、アコーディオンプリーツが広がり、独特なシルエットが生まれます
手に持つと、シルエットがより際立ちますよ

アコーディオン構造が他にはないシルエットを生み出してくれるので、シンプルな生地でつくっても存在感のあるレティキュールが完成します



アコーディオンは、パーツごとに生地を変えることで、さまざまなデザインアレンジが楽しめます

この作例では、アコーディオンプリーツの生地を変えたり、前後の生地を変えたりしてみました



機能面でも良いことがあるんです

プリーツがカバっと広がり、口が大きく開きます
そのおかげで、荷物の出し入れが容易になります



以上が、私の製作したレティキュール「レギュラー」と「アコーディオン」の紹介でした
ぜひ動画も合わせてご覧くださいね



それでは、ここからは【レティキュール誕生の歴史】に迫ります

【ドレスから ”ポケット” が消えた】

時代は18世紀末フランス
流行の震源地として、パリは世界のモードを牽引していました

しかし、迫りくる革命の足音は、新たなる時代、新たなる政治、そして新たなるモードを生み出します

上流階級の女性たちは、宮廷文化を体現した豪華絢爛なシルクドレスを脱ぎ捨て、古典彫刻からヒントを得た質素で素朴なコットンドレスを身に纏います


【シュミーズドレスの衝撃】
Photo:Madame Bonaparte at Malmaison (Gérard)1801

まるで古代ギリシアの人々が、布をただ身体に巻き付けていたように、女性たちは己の身体のうえに薄いコットンを添わせるように着用します

そのドレスは、シュミーズ(肌着)ドレスと呼ばれ、着用する女性たちは「ヌード」と揶揄されました


人間本来の自然な身体美を表現したシュミーズドレスは、コルセットをも排除します

シュミーズドレス以前のドレスには、コルセットのうえに巻き付けるポケットが存在していました
スカートの脇に切り込みを入れて、中に忍ばせたポケットにアクセスできるようにしていたのです

しかし、コルセットが廃されたシュミーズドレスでは、そのようなこともできません
ポケットは、無くなってしまったのです


【レティキュールの誕生】
Photo:Victoria and Albert Museum, London Bag 1790-1800

そして、新たなポケットとして頭角を現したのがレティキュールでした
初期のデザインは、コルセットの上に巻いていたポケットと似た楕円形です

その後レパートリーは瞬く間に増えて、多種多様なデザインが生まれます
巾着状のものから多角形のものまで様々です


Pohto:Los Angeles County Museum of Art Woman's Bonnet Europe, circa 1830

レティキュールは、その後100年以上に渡り、女性ファッションに彩を添える名脇役となります
特に、服装がシンプルだった1790~1820年ごろは「なくてはならないもの」とまで親しまれていました


Pohto:Los Angeles County Museum of Art Reticule France, 1800-1825

レティキュールは、装飾性に富んだ小さなバックです
刺繍やタッセルで華やかにデザインされました


Photo:Victoria and Albert Museum, London Fashion Plate 1836

こちらは1836年のファッションプレートです
ロマン主義の影響を受け、シュミーズドレスから一転、大胆にデフォルメされたシルエットに変化しています

しかし、レティキュールは健在です
女性の腕にちゃんと引っ掛けられています


それでは、当時のファッション誌に掲載されたレティキュールも見てみましょう

【1870年フランス】

レティキュールらしい巾着タイプのつくり、そしてタッセルが幾つも垂れ下がります


【1881年フランス】

刺繍、リボン、レース、タッセルなど、さまざまな装飾があしらわれています
左のほうは持ち手が長く、細い腕に巻き付けて持ったのでしょうか


Photo:Victoria and Albert Museum, London Handbag 1889

こちらは19世紀末のトラベルバック(旅行鞄)です
トラベルバックの堅牢なデザインが、後のハンドバックへと受け継がれるのです


【1910年フランス ファッションスケッチ:Les Createurs de la Mode】

パリの最新スタイルに身を包んだ女性たち

上着は、19世紀のボディスから、20世紀らしいジャケットスタイルへ
スカートも、お尻を膨らましたバッスルから、スマートなストレートシルエットへ変化します

スタイリッシュなエドワーディアン朝の着こなしに合わせたのは、巾着状のレティキュールではなく、角ばった印象のハンドバックだったのです

1910年代は、レティキュールからハンドバックへの転換期といえるでしょう



皆さんは、レティキュールをどのようにつくりますか?

ぜひ、半・分解展の型紙を使ってアレンジをお楽しみください

個人的には「和服」にも似合うんじゃないかなと思っています

完成したレティキュールはハッシュタグ #半分解展をつくろう を付けてSNSに投稿していただけると嬉しいです

皆さまがつくったレティキュールを見られる日を楽しみにしています

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