Ukrainian Corset

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Ukrainian Corset(ウクラニアン コルセット)
美しい背面のプリーツが目を惹く
1900年初頭 ウクライナの民族衣装です





【 幾重にも折られるプリーツ 】

ふんわりとした裾のプリーツが歩くたびに揺れる、表情豊かな衣服です
そして驚くことに、このプリーツはすべて上半身から延長して裁断されていたのです

ウエスト位置で切り替えるのではなく、わざわざ1枚続きで取った贅沢に布を使う設計になっています


【 当時の実物 】

袖なしの「ベストタイプ」のかたちです
パープルとイエローが混じった複雑なジャガード織り模様が美しいです

私には民族衣装とは思えない、都会的でモードな印象にすら映りました


【 ウクラニアンコルセットを着た女性 】

ウクラニアンコルセットは「ヴィシヴァンカ」と呼ばれるウクライナの伝統的なシャツのうえに合わせて着用されました


【 衣服標本 】

分解して驚いたのは「裾のフレアー分量」が想像以上に多かったことです
なんと全長は「3m80cm」もありました



【 試着サンプル 】

私は「袖付き」で製作しました
販売する型紙には「袖の型紙」も付けています
袖なし / 袖あり、お好きな方でおつくりください



サイズ表の寸法だけをみると、肩幅の小ささに驚かれるかもしれません
100年以上前の衣服は、現代に比べ肩幅が小さく設計されています
しかし、ちゃんと着用できる設計になっているのでご安心ください

肩幅よりも「胸囲」を基準にして、サイズを選ばれることをお勧めします

まずは、ご自身の胸囲にメジャーを当てて、ヌード寸法を出してみてください
胸囲のヌード寸法から「+12~14cm」前後のサイズを選ぶのがオススメです

例えば、ヌードサイズが83cmの場合は、サイズ1または2
92cmの場合は、サイズ3または4
100cmの場合は、サイズ5または6がピッタリになります

サイズ選びで迷った時は、問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください




それでは、まず「袖なし」のウクラニアンコルセットの着用画像をお見せします

153cm 細身の女性
「サイズ0」を着用

ちょうどピッタリ
ジャストサイズです









このバックスタイルが、とても素敵です

甘すぎず、可愛すぎずの絶妙なバランスはアンティークの構造ならではでしょうか




続いては「袖あり」のウクラニアンコルセットです

モデルは先ほどと同じく
153cm 細身の女性
「サイズ0」を着用です


生地は「厚みのあるメルトンウール」でつくりました










ウクラニアンコルセットは、揺れ動くプリーツがさまざまな表情をつくります
なので静止画でみるよりも、動画でみていただいた方が魅力がより伝わると思います







こちらがアンティーク市場で最もポピュラーなウクラニアンコルセットです
(恐らくポルタヴァ州又はチェルニーヒウ州のもの)


【袖付きのウクラニアンコルセット 実物】

別珍で縫われた文様が大迫力の1着です
丈も長いので、なかなかの重量があります


凄まじい手仕事




背面のプリーツは、私が所有するものと同じく一枚続きで裁断されています




そして驚くべきことに、プリーツのなかにさらにプリーツが...
二重プリーツでとんでもない分量の布を使ってフレアーがつくられています
手に取ったときの重さにも納得です




裏地はもはや芸術です
ステッチ跡がまるで絵画のようです
(ウクラニアンコルセットの実物を見せてくれたHさん、ありがとうございます!)



ウクラニアンコルセットのなかに着るシャツ「ヴィシヴァンカ」の実物も紹介します



私が所有するヴィシヴァンカは、控えめに手刺繍が入った1着です
(これでも、かなり控えめな方なんです)

もう袖部分がカチコチになるくらいに刺繍を打ち込んだものも存在します



フレンチスモック同様に「真四角のパターンの組み合わせ」で設計されており、首元にギャザーを寄せて着られるようにしています



背中の流れ落ちるようなギャザーが美しいです





私の所有するヴィシヴァンカと似た刺繍が確認できます


こちらは、もりもりのクロスステッチ刺繍です
ばっちり着こなしており貫禄がありますね



ここからは、私が製作したメルトンウール素材のウクラニアンコルセットを見ていきましょう

【 トグル と ヴィンテージテープ 】

フロントには、ワンポイントして「水牛のトグル」をあしらいました
トグルを留めるヴィンテージテープもあえて長く垂らして、背面のプリーツ同様に揺れるように設計しています



アップで見るとこのようになっています
前になる身頃にトグルを付け、後ろになる身頃にループをつくります



トグルから下の開閉は、スナップボタンにしています
前身頃の裏地は付けなかったのでその代わりに、スナップボタンが被るところに共地をたたきつけて強度を保っています



バックスタイルは本物に忠実に
ちゃんと「身頃からの1枚裁ち」でプリーツをつくりました

4m弱ある布の分量ですので、つくる素材によって大きく表情が変わるでしょう
とろみ感のある素材よりは、適度にハリ感のある素材の方がウクラニアンコルセットのプリーツを活かせると思います


【 袖口スリット 】

袖には半・分解展らしいアレンジを加えています

太めの袖に設計し、袖口にはスリットを設けました

ウクラニアンコルセットの実物は、意外と細い袖なんです
しかし、どうも細長い棒状の袖が、ボリュームのあるボディの雰囲気に合わないと感じたので「ポテっとした太めの袖」にアレンジしました

ちょっと変わった1枚袖にしているので、型紙を購入される方はお楽しみに


【 身頃のポケット 】

大抵の場合、ウクラニアンコルセットにつくポケットは「ヘソと胸のあいだ」くらいに配置されています
つまり、結構高めについているんです

少々、現代には使い勝手が悪いと感じたので、気持ち下げた位置にデザインしています
目立たない脇よりに配置していますので、皆さんのお好みでアレンジしてください



裏地はカジュアルに「背裏と袖裏」のみで仕上げました

販売しているパターンは「総裏仕様」になっています
こちらもお好みでアレンジしてください

そして、ウエスト部分には「ウエストベルト」を縫い付けています
このベルトを留めて着用すると、シルエットがぐっと良くなります

ウエストベルトは、ヴィクトリアからエドワーディアン朝の女性服の定番ディテールですが、民族衣装であるウクラニアンコルセットにも付いているんです



背中のプリーツの処理は裏地のなかに流し込んでしまうのが良いでしょう
私はウエストベルトを付けたので、上記画像のようにウエストベルトのなかにプリーツを流し込みました



それでは最後に、私の所有する20世紀初頭の「ウクラニアンコルセット」を見て、終わりたいと思います

Aラインに広がるフレアーシルエット


ウエスト位置がかなり高めに設定されているのもウクラニアンコルセットの特徴のひとつです


フロントは「カギホック」での着脱となります
花柄があしらわれた樹脂ボタンが付いていますが、こちらは飾りになります

それにしても、この複雑なジャガード生地は迫力があります





高いウエスト位置からプリーツが落ちるので、より揺れやすい設計になっています
歩くのが楽しくなる1着です


背面のウエスト位置にも樹脂ボタンが付きます
こちらも装飾としての意味合いで付けられます

ウクラニアンコルセットの定番ディテールです
皆さんはどんなボタンを付けますか?


約4m弱の布が折りたたまれたプリーツ


ここまで持ち上げても、まだまだプリーツの折り目は残っています
本当に贅沢に布が使われいるのが分かります


【 プリーツ部分の構造】

このように背中の細いパーツから、台形状のプリーツが1枚続きで裁断されています
製図に落とし込んでみると、プリーツ部分の形はどれもほとんど同じでした


【 裏地は切り替えている 】

表地は1枚続きで裁断していますが、裏地はちゃっかり切り替えています
裏地を縫う工程を考えてみれば、自ずと裏地側はウエストで分断したくなります
生地の節約にもなりますからね

表の見栄えと裏の効率、どちらもしっかりと考えられているのですね


【 なんちゃって切り替え 】

そして、背中部分にも秘密があります
表地は、背中を左右合計8枚のパーツで細かく切り替えているのにも関わらず、なんと裏地側は合計2枚です

つまりパネル状になった切り替えはすべて「ただの縫い目」なだけで、背中の造形をつくるような操作は一切されていないのです

その証拠に上記画像の右側の裏地部分をみてください
矢印部分は、ただのステッチなんです


【 ウクラニアンコルセットの裏地 】

淡く紫がかったギンガムチェック柄の裏地です
表地のモードな印象のジャガード織りとはだいぶ印象がちがう可愛い生地です


【 ウエストベルト 】

ウエスト部分には、このようにテープが仕込まれています
結ぶことで背中のフィット感を調整でき、シルエットも大きく変化します



以上でウクラニアンコルセットの紹介を終わりにします

半・分解展の型紙のなかでは、比較的簡単で初心者向けの型紙といえるでしょう
(といってもブラウスやシャツが縫えるレベルは必須)

皆さんもウクラニアンコルセットをお気に入りの生地でつくってみてください
お子さんが着てもきっと可愛いだろうなあと個人的には思っています


ウクライナの民族衣装について、より深く知りたい方にはこちらの動画をオススメします
さまざまウクラニアンコルセットやヴィシヴァンカを着用する様子が見れますよ






人気の型紙