French Smock

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French Smock(フレンチ スモック)
19世紀から20世紀初頭に着用された市民の日常着です



スパッツ



書留鞄




#半分解展をつくろう 】の第3弾となる今回は

100年前のフランスの日常着
French Smock フレンチスモックを紹介します



#半分解展をつくろう では「アレンジ と チャレンジ」をコンセプトに
初心者の方でも挑戦しやすい、シンプルな旧き型紙を紹介しています



今回のフレンチスモックは、100年前の「物を大切にする心」「直線の美しい構造」に着目します
和服にも通じる美意識を宿した興味深い1着です




フレンチスモック




ネックを ぎゅっ と絞って着用します




大人サイズ 袖丈はハーフを着用
160cm女性 普段着る洋服はM~Lサイズ












大人サイズ 袖丈はロングを着用
152cm女性 普段着る洋服はS~Mサイズ




3人のモデルが着ています
サイズ感の参考にしてください



子供サイズは「身長130cm」をベースに設計しています
アレンジ次第で110cm~150cmくらいまでは対応できると思います







型紙はPDFデータで実寸大のものがA4サイズに分けられています

上記リンクより、説明書も一緒にダウンロードできます



↑このような説明書に沿って、印刷したA4用紙を貼り付けるだけで型紙が完成します

※印刷の関係上、用紙と用紙のあいだに5mmほどの隙間ができる場合がございます
隙間は気にしないで大丈夫です
製作するにあたり問題はありません



説明動画もあります
ぜひ合わせてご覧ください




160cm女性
大人サイズ 袖丈ハーフ



160cm女性
大人サイズ 袖丈ハーフ



152cm女性
大人サイズ 袖丈ハーフ



152cm女性
大人サイズ 袖丈ハーフ



160cm女性
大人サイズ 袖丈ロング



160cm女性
大人サイズ 袖丈ロング



152cm女性
大人サイズ 袖丈ロング



152cm女性
大人サイズ 袖丈ロング



ご覧の通りとてもシンプルな型紙です
お好きな着こなしでアレンジを愉しんでください




ネックの幅は、「Wide ワイド」と「Narrow ナロー」の2種類を用意しました

こちらは「ワイド」です
ネックを絞らずに着用すると、上記画像の通り大きく首元があきます



トルソーに着せるとこんな印象です



少しだけ絞るとこんな具合に




目いっぱい絞ると、たっぷりとギャザーが出ます




こちらは「ナロー」です

ワイドに比べ、衿の開きを小さくしています
肩にしっかりと洋服が掛るので、絞らずに着ても安定感があります
肩幅が小さい人に良いかもしれません



トルソーに着せるとこのような印象です




衿の開きが小さい分、ギャザーの分量も少なくなります


型紙には「ワイド」と「ナロー」両方の線が記入されています
お好きな方をお使いください
アンティークな雰囲気を出したい場合は、ワイドがおすすめです




では、ここで、当時の実物を見てみましょう

しっかりとしたリネン素材でつくられています
可愛いですよね



スカートにタックインして合わせるのも素敵です
こちらの写真は、埼玉県所沢市の古着屋「アルテリヒト」さんからいただきました
私のオススメショップですので、お近くの方はぜひ!



ここからは、
さらに深くフレンチスモックの構造を探っていきます

冒頭に書いた「物を大切にする心」と「直線の美しい構造」の意味がわかってきますよ



平置きにすると直線的な構造がよくわかります

例えば、肩と袖を見てもらうと横一直線に「真っ直ぐ」ですよね
普通のシャツのように傾斜がついていません



ネックを絞り着用することで、直線的なシャツを身体の曲線に最低限フィットさせています

この手法は、19世紀のシャツに多く見られます















スモックシャツは、男女問わず多くの市民に着用されていました

主にインディゴ染のものは、ワークウェアとして
白いものは、ルームウェアとして使われます



首元には、クロスステッチ刺繍でイニシャルが入ります

これも当時のポピュラーなデザインです

刺繍のうえにあるテープを通す2つの菊穴も、手縫いでかがってあります



裏をみると手仕事のあとを垣間見ることができます



袖のしたには「三角の布」が確認できます
これは一体なんでしょうか



畳んでいると三角に見えますが、開いてみると四角形です
この四角い布は「マチ」や「ガゼット」と呼ばれます

ただし、ハンティングウェアなどに付くマチの構造とはちがい、腕を動かすための運動量を確保する機能はありません

このマチは、アームホールの寸法を大きくするためのものです
そうすることで直線的な構造のシャツでも着脱がし易くなります



次に身頃をよくみると、左側だけに縫い目がありました



この縫い目を裏返せば「耳」が出てきます
どうやら、ただの縫い目ではなく「ある法則」に従って生まれた縫い目のようです



この写真は1から4の順でフレンチスモックを分解し、生地の状態に戻したものです


生地の状態にしてわかることがあります
それは100年前のフレンチスモックは、一切生地を無駄にせず洋服のかたちにしているということです

つまり「物を大切にする心」を表現するために用いられた手段が「直線の美しい構造」だったのです



例えば、袖を分解してみると
三角のマチが、四角であることに気付き


袖をひらけば袖自体も四角であったことがわかります
大小の四角い布2枚で、袖1枚をつくっていたのですね


そして両方の袖を取り外したあとに、身頃を分解していきます

身頃の脇の縫い目をほどけば、ぱっくりと開くことができます

真ん中に空いた穴は、顔出すための穴です
肩に縫い目がないため、開くと長~い1枚の布になります



次に「左側にだけあった縫い目」をほどきます

すると「左側が完全な直線」になります
この左端に生地の耳が通るんですね

分解された2つの直角三角形の布は、くるっと引っくり返して・・・



右側にピッタリと収めることができます

直角三角形の底辺にも耳が通っているので、これで生地巾がわかりました



最後に四角形だった袖を並べると、ちょうど生地巾に収まります

この半袖みたいな袖丈は、生地を目いっぱい使って裁断した長さだったのですね

真ん中の穴には、袖に付いていた四角いマチがすっぽり入りました
ネックが独特なスクエアのかたちになっていたのは、四角いマチを取るためだったんです



まるでパズルのピースを埋めるように、1枚のシャツが生地のかたちに戻っていきます
生地を少しも無駄にすることなく使われていることが、分解することで良く理解できました




こちらはイギリスのV&A museumに所蔵されているスモックです

この見せ方は、和服にも通じるものを感じさせますよね
なにより直線的な構造だからこそできる美しい魅せ方です




ここからは、
フレンチスモックに挑戦する方にむけて「製作のポイント」をお伝えします


まずはネックの処理です

表の線をトレースして「見返し」のパーツを取ると良いでしょう
私は4cm幅の見返しをつくり、縫い代の処理はあえてせずに断ち切りでラフに仕上げました



テープ通す菊穴は、手縫いでつくりました
Youtubeで「菊穴 手縫い」で検索すると分かりやすい動画がたくさん出てきますよ

デザインによってはテープが出る位置を、後や脇にアレンジしても可愛いでしょう



キッズサイズで製作される方は、テープでなく「ゴム」を通すのもラクチンで良いですね
着脱も簡単になり一石二鳥です



脇のマチ

こちらは縫製のことを考えて微調整を加えています

実物は四角形でしたが、私の型紙では四角形を2つに分断し「三角形」にしました

こうすることで「身頃の脇と袖下が一気に縫える」ようになります
縫製手順的にもだいぶ楽になりました

もちろん本格的な四角マチを付けたい方は、分断した型紙をくっつけて使用してください



長袖タイプの方は、裏地を付けて秋仕様にしています

薄い裏地ですので、表地と一緒に一気に縫っているので手間もかかりません



袖口もカフスなどは付けずに、あえて断ち切りにしています

袖はただの四角のかたちです
そのままでは袖口が大きすぎるので、イセミシンをかけてギャザーを寄せてみました
そのギャザーの上にリネンテープを叩いただけです

脇の縫い目を利用して小さなスリットにボタンも付けてみました











私は、これまで何着ものフレンチスモックを分解してきました

その度に発見と驚きがあります









フレンチスモックの美しい構造美を、ぜひ皆さんもかたちにしてみてください

InstagramやTwitterに投稿する際は #半分解展をつくろう を付けていただければ私も見つけられます

素敵な作品をお待ちしております



 

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